2017年3月11日土曜日

検証部 その2

※ネタバレあり注意
聲の形のネタバレしてます。
この記事を読む前に是非読んでから御覧ください。

その上で、こちらと、こちらと、こちらと、こちらの批評も読んでいただければ、より理解が深まると思います。




聲の形にみるイジメ構図と検証部騒動


いくつかの作品の批評を書きましたが、今回は何度も取りげてきた聲の形と検証部騒動の2つをリンクさせて、その様を批評していきたいと思います。

今回の検証部騒動は、聲の形1巻中心に描かれていた、西宮いじめとそこから連鎖した石田いじめの構図とほぼ合致します。固有名詞を入れ替えるだけでほぼ全てが成り立ちます。

※性格や人物を相関させる意図ですので、その際、さすがに時系列ごとまでは合致しません。あくまで俯瞰した際の概略の関係図が全く合致するという点を留意ください。


西宮イジメ構図
※主要キャラで川井がいないのは、典型的な日和見で風潮に同調していたただけのため。


田中P叩き構図
※B氏とY氏だけ特定個人になってしまっているので、少し配慮してイニシャルにさせてもらいました。今更ではありますが、彼らを特定して非難したいわけではない、という意図です。(検証部メンバーを名指しせずに、両名だけ個人名を書くのはバランスに欠けると思いました)
分かり易く書くのにかなり苦労しました。ご覧の通りそれぞれ固有名詞を入れ替えるだけで、一連の検証部騒動と全く合致していると思います。田中Pを西宮役に割り当てるのは、キャラの絵面的にさすがに違和感あるとは思いますが…まぁ…仕方ないです…。田中Pも愛嬌ある方ですが、さすがに西宮さんほど可愛く無いんですけども…まぁそんな事は忘れてください。

しかし、何をされても物を言えない西宮と、何も言わない田中P、という性向は全く共通します。その理由が先天的障害か、業務上の責務としてかの差でしかありません。そんな相手を、好きなだけサンドバックにして楽しんでいる人達がいたという事です。

さらに加えて肝心なことは、西宮イジメを助長したものは、赤色の部分、最大多数である日和見層です。彼らがそれぞれのイジメ構図に積極的に批判的でさえあれば、イジメは起きなかったことは言うまでもありません。




石田イジメへの移行


そして次の構図。
石田いじめ構図

※石田(小)と(高)はそれぞれ小学生時代と高校生時代の石田。




検証部叩き構図

石田イジメと決定的に違うのは、検証部と石田(小)の差。石田(小)は、己の愚かさを理解することが出来たが、はたして検証部は…。


赤色の日和見層であった一部が、次は積極的にそのイジメ構造のコアに参加するようになります。
石田による西宮イジメは相当酷いもので、彼が批判されるべきは当然だとおもいます。しかし、石田に対するイジメもその酷さは何も変わりません。むしろ「西宮をイジメていた石田はイジメられて当然である」という認識が、より一層石田イジメを強烈なものへと増長させている面すらあります。


その背景には、クラス会で石田がそのイジメ構図を「教師含めた全員が許容していた事を指摘した」、という事があります。クラスの大多数は、自分達もまた消極的にイジメ構造に加担していたことを否定したいがために、なおさら全員が石田へ憎悪を集め、石田イジメの風潮が決定づけられたという事を指摘せねばなりません。

確かに石田には明確な罪があるでしょう。ではその彼の行動を容認していた大多数は一体なんなのか。石田イジメが黙認された背景には、石田に西宮イジメの罪の責任を全て負わせる為であったということです。その悍ましさは、西宮イジメをしていた石田と何ら変わることはありません。

今僕は大多数の人々を批判しています。ですから次にサンドバッグにされるのは僕になるかも知れません。最大多数の大衆性という、検証部メンツと表裏一体の悍ましさがその内面には存在しています。聲の形という作品は、まさにこういった、人間の内側にある特定のドグマがある局面を経た後反対側のドグマへと流れ行く、シーソーのように両極端な性質を孕んでいる事を描き出した作品でもあります。(同様の構図は前回の記事でも述べました)

※クラスメイトのイジメを容認する事と、ネットでの炎上を黙認する事の差異はもちろん認めます。ネットの炎上案件を鎮火させるのは困難極まりなく、真っ当な議論で鎮火に成功した話はほとんど聞いたことがありません。あくまで今回は、その構造的類形であるという比較であることを留意ください。

※何度も書きますが検証部を擁護する意図はありません。更には、B氏やその支援者、あるいは誰でも良いですがこの一連の騒動の関係者の特定個人の誰を非難するものでもありません。クドクドとエクスキューズを書き並べるような事はしませんが、全ての人間に同じだけ等しくそこには斟酌すべき事情が存在します。

以前の記事に書いたように、僕自身は石田将也というキャラクターが大好きです。己の罪と真正面から向き合い、それ自体を生き様にまで昇華させる、むしろ彼こそ聖人だろうと思います。そして、そんな石田に相当するB氏も、僕は心から尊敬します。





大衆性と検証部騒動


この騒動を通して言いたいことは、誰しもその内側には検証部的エゴが根底に流れており、それを自覚する必要があるという事です。これは本当に誰にでも起こりうることです。もちろん僕にも。

事象の規模の大小はあるとは思います。今回の騒動は、それが十数名前後程度規模のゲームユーザーグループでしかなかったため、この程度で収まりました。その異常性が明らかになるにつれ、より常識的な大多数の前に抑止されました。この反応自体は非常に正しい社会的防衛反応でした。

しかしその天秤がシーソーのように次は反対側へ傾く事もまた危険です。あるドグマから反対のドグマへ天秤のバランスが崩れると、そこから次の大きな大衆の怪物が生まれうる素地となります。

検証部は極少数の人間が客観性を喪失しエゴを大暴走させたに過ぎませんでした。人数規模が小さかったため、その被害規模も小さくすみました。しかしこの構図は、「クラス単位で起きればイジメ」として、「イデオロギー団体でならば内ゲバとテロ」を起こし、「都市規模で起きればポピュリズムという衆愚政治」になり、挙句の果てに「国家規模でならファシズム」へと至るものです。

重要なのは、その異常性を発現させる人数的規模が大きくなればなるほど、反比例して個々人の保有する異常性が小さくなる事です。言い換えると、一人一人が溜め込むほんの僅かなエゴの暴走を国家規模で累積すれば、その結果巨大で恐ろしい怪物が生まれます。その怪物の規模に反比例して個人へ帰結する責任は小さくなる。そういう大衆性の恐怖です。

笑い男事件の記事で書いた、「繋がりを持たない複合体(stand alone complex)」がとんでもない化物を生み出しているにもかかわらず、それが巨大であればあるほど、個々人の責任は極小化していく。それが大衆性の恐ろしさです。

「検証部の奴らの考えてる事は理解できない。あいつらは人間性を失った異常な存在なんだ」と、自分とは無関係な悪性であると切り離してしまうのは本当に危険だとおもいます。彼らだけが異常なわけではありません。あらゆる人が必ず内在させている、人間という存在自体の脆弱性。どこにでも誰にでも、必ずある話です。

ほんの些細なきっかけでその天秤は傾き、おぞましいドグマへと至る。この一連の騒動はその人間の脆弱性を顕にしたものに過ぎません。そしてそれらドグマはあらゆる場所で蠢き、この社会を覆い尽くしてしまっています。

公共事業叩き、公務員叩き、財政出動叩き、郵政叩き、左翼叩き、右翼叩き、農家叩き、林業叩き、各種業界団体叩き、原発叩き、土木叩き、豊洲叩き…………。そしてその反対側には、それらを叩くことで自分への支持へ還流させる悍ましき政治的意図とドグマ。維新だ改革だ、などと主張する低レベルな政治議論が横行する。何でもない善良である筈の人たちが、大衆という怪物を成すという事。あなたも僕もその化物の一部であるという現代社会の恐怖。

連想された方もおられるでしょうが、これはドナルド・トランプの移民排斥の問題や、EUにおけるBrexitなどの一連の現象と通底するものを感じるかも知れません。それはある意味正しいと思います。それまでのボーダーレスだの、グローバリズムだのという、馬鹿馬鹿しいドグマに天秤が大きく傾いていたのが、その異常性に気づいた国民が傾きを是正しようという動きの一環であると思います。その動き自体はとても正しい。

しかし今度は、再びそのまま大きく反対側へと天秤が傾き、差別主義や極端な排外主義へと繋がるのもまた愚かな事であるのは言うまでもありません。

政治にも人間関係にも正解などありません。あらゆる事象に当たる際、常に自分のなかの天秤をチェックし、そこに何か異常な傾きがありはしないか、自問自答しながら均衡を取り続ける事でのみ、己の異常性とドグマを是正できます。


検証部問題なんて、正直どうでもいいです。ただ単にこの社会の抱える恐ろしいほどの病巣があらわになった瑣末な事象の一つにしか過ぎません。その全てが等しく悍ましい。その有り様は僕にとってただただ絶望的なものとして映ります。





以上、この騒動から感じた事を書かせてもらいました。偉そうな事を言っていますが僕自身も自省せねばならぬ事ばかりであるのを日々痛感しています。ここまで読んでくださった方も同様に、少しでも何か感じ取っていただけたのならば幸いです。

2 件のコメント:

  1. 見るに耐えないくらい汚い言葉で艦これ開発運営を罵倒するリプやツイートがあるのは知っていますが、検証部がそのような行為を行っていたでしょうか?
    確かに彼らは2016春イベで艦これ開発運営を批判しましたが、上で書いたような行為とは異なると思います。
    返金署名が行き過ぎであったとしても、あれは最終的に検証部とは別個となっていますし。

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    1. 具体的にどんなのだったかは当時のツイッターなりのログを遡ってもらうしかないとは思います。ただツイッターはほんとに遡及性の悪いメディアなのが困りますね。検証部のコアメンバーはログを消したり鍵かけたりしてますし。とりあえず具体的なの少し探してみました。

      https://twitter.com/noisy_sgr/status/708437087750520832
      https://twitter.com/noisy_sgr/status/713529211164581888

      彼のログを田中とか検索したら一応色々出てきはしますね。タナコロ勢と検証部は互いが田中Pへの憎悪を増幅し合う触媒のようになっていたのは確かだと思います。僕もあまり具体的な事を記憶しているほうではないので、どうしても気になるのでしたら、もっと詳しい方に聞かれた方が良いと思います。

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