(※間違えて下書きの記事を公開していたのを1ヶ月経ってから気づきました…。改めて書き直します。)
五月初三。雨。米人の作りし日本新憲法今日より実施の由。笑ふべし。
15年か20年以上前だったと思いますが、永井荷風の小説を映画化した濹東綺譚という作品をそれと知らずに何気なくボンヤリと見ていた記憶があります。戦中戦後の日本の様子を永井荷風からの目線で描いた作品で、濡れ場の多い色っぽい映画でしたが、当時の僕にはその意味はハッキリと理解できる作品ではありませんでした。
ただそれでも今でも忘れられない場面が一つあります。
冒頭の一文は、永井荷風の日記の一節で、5月3日の祝日の朝に、永井荷風が玄関先へ日の丸を掲げながらモノローグでこの一文をつぶやくというものです。民家の並ぶ通り一面に掲げられた日の丸と相まって、その意味はわからなくともインパクトだけは今でも僕の中に残っています。
その頃よりはいくらかは大人になって世の中のことが少し理解できるようになり、永井荷風が「笑ふべし」という一言に込めた思いというのも、少しは理解できるような気がします。
総力戦の戦争とGHQの日本統治、鬼畜米英から欧米礼賛。国の形が歪んでいき、いわゆる「戦後日本」が生まれゆく、明治生まれの作家にその様がどのように写ったのか。
5月3日になるたびに、それを思い出します。